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研修旅行記一日目

今回の研修旅行は、一水寮金継ぎ教室と、妻のくっしーが主宰している自宅金継ぎ教室の合同で行うことになりました。参加者は、なんと総勢22名!

行程は、

9月2日に、

漆掻き職人・猪狩史幸さんの漆掻き仕事見学。

漆掻き職人・大森清太郎さんの漆苗畑見学。

漆工房・滴生舎見学。

9月3日に、

タイマグラの桶職人・南部桶正さんの工房見学。

と盛岡観光。

の予定でした。

ツアーを組んだのですが、一番の心配事は天候です。

知られていないようですが、

漆掻きの仕事は、雨天では行わないのです。

採取した漆に水が入ると漆の質が悪くなるのでもちろんダメ。

樹皮が濡れているのもダメ。

掻きとり傷に雨が入ってしまうと、その後木が弱って漆が出なくなってしまうのでダメ。

と、とってもデリケートなんですよね。

旅行を企画してから、当日に晴れてくれることを願うばかりでしたが。。。

9月2日土曜日。

東京は曇り時々雨、岩手の予報は曇り。

こんなに天気予報を小刻みに確認したことは今までになかったなぁ。

台風の接近を睨みながら、反れることを念じながら、現地の晴天を願いました。

寝起きで状況が今一つかみ切れていない

長女さなえを抱えて7時東京出発!

盛岡は曇り空。

おっ?漆掻きできるかも?と

期待が高まりました。

が、盛岡から移動中、

漆掻き猪狩さんから連絡が。

当日漆を掻く予定の岩手県一戸町の状況は雨。。。

実際の漆掻きをすることはできない天候でした。

ここまで来て少し皆さんザンネン。

でも、猪狩さんが雨でもできることを準備してくださっていました。(涙)

盛岡cafuneのお弁当

漆の木の下で、みんなで食べる予定だったお弁当でしたが、外は雨。

猪狩さんが機転を利かせてかりてくれた、地元の公民館の中でのお昼ご飯になりました。

雨で漆掻き仕事が見ることができない残念さも、お弁当のおいしさで少し緩まり。

ひとまず雨が弱まるまで、一戸町鳥越もみじ工遊舎で、竹細工工房の見学を。

籠好きの自分としてはとてもワクワク。

少し漆のことも忘れて籠笊選びに夢中になってしまいました。

籠に夢中になりすぎている間に雨も弱まり、早くもお土産もできたので、

本来の目的、漆掻きの現場見学です。

籠に夢中になりすぎている間に雨も弱まり、本来の目的、漆掻きの現場見学です。

猪狩さんが今年、掻きとりを行っている場所は、タバコ畑の周りにありました。

 漆植栽地と聞くと、広い土地に漆だけ植えてある場所を想像しますね。

 元々は、里山に植えていたものです。里山の漆植栽地が、手入れも行き届きやすくて生育もいいんですよね。

                                   掻き取り方法の説明と、道具の使い方、いい木の見分け方、猪狩さんの漆のくわしい説明が続きます。

教室で使っている漆は、猪狩さんの採取した漆なので、自分たちが使うものの関心は高く、漆に対する質問が飛び交い、飛び交い、猪狩さんは大忙しでした。

猪狩さんは哲学を持って、丁寧に仕事される方なんです。

右が猪狩さん、左が僕。

「漆をやる人はみんな坊主なんですか?」という質問も。。。

いいえ違いますよ。髪型は自由です。

 漆の掻きとり方法のレクチャーと、伐採した木を使っての

漆掻き体験もさせていただきました。

おっ!いい腰。いい目! 猪狩さん弟子にどうでしょうか?

 テレビなどの映像で、漆の採り方を見たことがある方ばかりでしたが、実際にその土地に行って見る衝撃、感動、ショックは皆さん大きかったようです。

 「木が黒い涙を流しているようだ~。」とか、「いい香りがする~」とか。

 そう、掻き取っている漆の木って、いい香りするんですよね。

僕はそう思うんだけど。人によっては違うかも。

 参加者それぞれ、何かしらの感動があったようです。

雨も上がり、なんだか楽しそうな参加者皆さんを見て、ほっとしました。

猪狩さんありがとうございます。

猪狩さんの仕事は、今後、別の機会に紹介させていただきたいと思います。

続いて浄法寺に移動して、漆掻き職人の大森清太郎さんの育てる、

漆の苗木畑の見学です。

 漆の苗畑って!そんなマニアックな場所に案内しました。

漆を掻き取る仕事にクローズアップされていますが、

大元の漆の苗を育てる方。漆を育てる木まで管理する方。の人材不足が危惧されているのです。

 現在、浄法寺で漆苗を育てている方は、漆掻き職人の大森清太郎さんご家族のみです。

全国的に見ても、個人的規模ではなく、苗木を育てられている方は2人ぐらいしか知りません。ほぼ大森さんの苗です。

 大森さん家族が苗木を育てられなくなる時が、いつかは来てしまいます。

漆苗木の今後が、大不安問題なんです。

 では育てれば?と思うと思いますが、これが農業を生業にしていないと無理だろうと思うくらいに手間がかかります。

 植栽できる漆の苗は、2年間畑で育てるのです。

 土を作り、種をまき、頻繁に草を取り、頻繁に水を与え、害虫を駆除し、消毒し、間引きをして、4月から11月まで畑で苗を育てます。

雪が降る前に、苗の根を切り、凍らない場所で越冬させます。

 翌春、1年目に苗木をもう一度畑に植え替え、一年間育てます。

一度、短期の作業体験をさせていただきましたが、僕には続けるのは無理だと思いました。

二戸市や、各漆業界団体によっても、苗木の育成を試験的に行われ始めているので、期待したいです。

さて、

漆掻き職人の大森清太郎さんは、職人としても素晴らしいですし、人としても、とても気づく方です。

 例えば、

大森さんに続いて植栽地を歩くと、とても歩きやすい。

 前を歩く大森さんは、邪魔になりそうな枝や、石を、除けてくれています。

 それが、意識してではなく、自然に身体に身についておこっている。その、さりげなさにいつも感動するんです。

 今回も、畑のあぜ道を車で通りやすいようにしてくれていました。

草刈りをして間もない、あの草の香りが苗畑に漂っていました。

 漆の種選びは、漆掻き職人の大森さんだからできる仕事かもしれません。

よく漆が採れる木の中から、種を採取しています。

 研修旅行一日目の最後は、滴生舎に寄り、工房も少しのぞき見させていただきました。

 滴生舎の入り口には、「顔はめ?」があるので、あなたも〇〇森さんになれますよ。

  いい顔だ それをつっこむ わが娘

  10年前、僕が初めて漆の木を見た時、漆はただの塗料じゃないんだ!こんなに人の手がかかって育てられているものなんだ!という感動でした。

 漆の仕事を続けていると、忙しいときや、急いでいるとき、漆の乾きを焦っているときは特に、漆をただの塗料だと思ってしまっています。

塗料として扱うだけだと、何か面白みを感じなくなってしまっていました。

 一滴を大事に使うとか、貴重だから大事にする、とか、それももちろん大事なことなのだけど、そんなことよりも。

 漆が使えるまで、大森さんや、猪狩さん、いろいろな人の手を伝っているんだということが、僕の中では大事なことで、漆の魅力だと思っています。

雨もおさまり一日目が終わりました。

二日目はもうしばしお待ちくださいね。


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